NetflixやAmazon Primeなどの配信サービスが普及し、海外作品を楽しむ機会が増えた現代。そんな作品の“日本語化”を支えているのが、映像翻訳者という職業です。字幕や吹替の翻訳を手がけるこの仕事は、単なる言語変換ではなく、文化や文脈、制限時間との戦いでもあります。今回は、映像翻訳者の仕事内容、字幕・吹替の違い、必要スキルや資格、未経験からの始め方まで詳しく解説します。
映像翻訳者とは?
映像翻訳者は、海外の映画・ドラマ・ドキュメンタリー・アニメなどの作品に対し、日本語への翻訳を行う専門家です。翻訳の種類は大きく分けて2つあります:
- 字幕翻訳:画面下部に表示されるテキスト翻訳
- 吹替翻訳(ボイスオーバー):日本語音声で演者がセリフを読むための翻訳台本を作成
いずれもただの直訳ではなく、視聴者にとって自然でわかりやすい“作品としての翻訳”が求められる仕事です。
字幕と吹替の違いとは?
字幕翻訳の特徴
- 1秒あたりの文字数に制限がある(日本語で4文字/秒が目安)
- 1画面あたり最大2行・40文字程度まで
- 短く、的確に、ニュアンスを損なわず訳すスキルが必要
- 観客の視線移動を考慮し、読みやすさが重視される
吹替翻訳の特徴
- 音声に合わせるため、セリフの長さ・口の動きに注意
- 俳優の演技に合う自然な日本語表現が求められる
- “言い回し”や“キャラらしさ”を出す表現力が必要
- 台本形式で翻訳し、演出家や声優に渡される
どちらも単なる語学力だけでなく、“表現力”や“演出感覚”が問われる高度な仕事です。
映像翻訳者に求められるスキル
- 高い語学力:英語→日本語が基本。中上級レベル以上が理想
- 日本語力:観客に伝わりやすく、誤解のない自然な表現力
- 作品理解力:ジャンル・ストーリー・キャラクターの把握力
- 文化理解:海外の慣習や比喩を理解し、日本語に“翻案”する力
- 映像翻訳ソフトの操作スキル:業務でTrados、EZTitles、SubtitleEditなどを使用
翻訳の“正確さ”よりも“伝わりやすさ”を重視できるバランス感覚が重要です。
どうすればなれる?未経験からのルート
映像翻訳者になるには、以下のようなルートがあります。
- 翻訳スクールで学ぶ:「映像翻訳専攻」や「字幕翻訳講座」などを提供する専門校に通う(例:フェロー・アカデミー、サン・フレア アカデミーなど)
- 通信講座やオンライン講座:自宅で基礎から学び、課題添削で実践力を磨く
- インターン・アシスタント翻訳からスタート:映像翻訳会社や制作会社にて経験を積む
- クラウドソーシングで実績を作る:翻訳案件を受けながらポートフォリオを充実させる
翻訳未経験でも「映像に特化した知識と訓練」を積むことで、チャンスは十分にあります。
必要な資格・検定はある?
必須資格はありませんが、以下のような認定・検定はスキルの証明に役立ちます:
- JTFほんやく検定:翻訳の実務力を問う民間試験
- TOEIC 850点以上:業界の足切り基準に使われることも
- 字幕・吹替翻訳講座の修了証:スクール経由で仕事を紹介してもらえる場合も
実際の現場では「試訳」(トライアル)が採用試験代わりになります。
働き方と年収
働き方
- 在宅フリーランス:納期ベースで案件を受けるスタイル。主流の働き方
- 翻訳会社・映像制作会社の契約翻訳者:安定した案件供給あり
- 社内翻訳者:放送局や字幕制作会社に常駐して働くケースもあり
収入の目安
- 字幕翻訳:1分あたり1,000〜2,000円(実績・納期・分野により変動)
- 吹替翻訳:1話(30分)で20,000〜50,000円程度
- 年間収入:副業〜年収400万〜600万規模のプロも
スピードと質を両立できる翻訳者ほど、高単価案件を安定して受ける傾向があります。
やりがいと将来性
「この日本語、自然で好き」「翻訳がうまくて作品に入り込めた」と視聴者に思われることが、映像翻訳者にとって最大のやりがいです。
また、配信サービスの拡大により、今後も需要は右肩上がり。韓国・中国・ヨーロッパなど、多言語への翻訳ニーズも広がっています。
副業や在宅ワークを目指す人にとっても非常に魅力的な選択肢といえるでしょう。
語学力とクリエイティブ力を活かしてエンタメの世界に携わりたい方へ。映像翻訳者という職業は、まさに“裏方の表現者”として作品の魅力を引き出す存在です。スクールで学びながら、トライアルを受け、実績を積んでいけば、未経験からでも夢は実現可能です。
字幕派か、吹替派か。あなたの言葉で、世界の作品を日本の観客へ届けてみませんか?
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